猿の見る夢~千夜一夜物語現代語化計画~

マルドリュス版千一夜物語(筑摩書房)を現代語に書き換えてみます。ちまちまと完結を目標に。

プロローグ②~王様、女性不信になる~

前回のあらすじ

妃に浮気をされて心がアレになってしまった王様兄弟が旅に出た。

 

 

シャハリヤールとシャハザマン、二人の王様兄弟が旅を続けるていると海に着きました。そばに真水が湧く泉があったので休憩する事にしました。

二人が泉の水でのどを潤していると、海がにわかに荒れ始め煙が立ち上りました。そしてなんとその黒い柱が兄弟の方へ向かってくるではありませんか。

慌てた兄弟は泉に生えていた大きな木に登って様子を窺いました。

やがて泉にたどり着いた煙はモクモクと形を変え、頭に箱を乗せたムキムキマッチョな魔神になったのです。

木の上で震える兄弟に気付かない魔神が箱を開けると、中から美しすぎる(TVで言うあれではなくガチのやつ)乙女が現れました。

「おい、お姫様よ。ここなら人間共は誰も見ていないことだし、お前の膝枕で一眠りさせてもらうぞ。起きたらまた"可愛がって”やる。婚礼当日にさらってやったあの時のようにな。グヘヘ」

「おやすみなさい魔神様。この眠りがあなたにとって快いものでありますよう」

姫が小鳥の歌のような声で答えると、魔神はすぐに寝入ってしまいました。

 

必死に隠れる兄弟が、木陰の様子を窺っていると、魔神に膝枕をしていた姫がパッと顔を上げました。

姫はすっかり熟睡している魔神の頭を地面に降ろすと立ち上がってニヤりと笑いました。

「いるのは分かってるのよ。降りてらっしゃい!大丈夫、こいつはグッスリ寝てるわ」

すっかり魔神にビビりまくっていた二人は、声を出さずにジェスチャーで姫に伝えました。「勘弁してください><」

「グズグズしてないで早くしなさい!お望み通りこいつを起こしてけしかけてもいいのよ?この世の物とは思えない苦痛を味わいたいならそれでもいいけど」

乙女どころか実はドSだった姫に本気の”凄み”を感じた二人は恐る恐る降りていきました。

兄弟がそばに立つと姫は言い放ちました。

「さ、ヤるわよ」

「は?(´・ω・`)

「アンタのナニでガッツンガッツン突いてきなさいって言ってんの」

「……よ、良かったなー弟。こんな美人さんとHできるってさー(棒)」

「いやいやいや、こういうのは年功序列でしょ。まずは年上である兄さんに譲ります^^;;;」

「魔神起こしちゃおっかなー」

「「是非ともヤらせていただきます!!!!」」

姫に忖度した二人は文字通り必死に腰を振りました。

事が終わり満足した姫は、持っていた袋から首輪を取り出して言いました。

「この首輪は貴方達みたいに、魔神が寝てるそばで私とヤっちゃった人からもらった指輪で出来てるの。今は確か~、570個あるのかな」

「お、おう。(この女、マジでヤベえ)」

「だからぁ、二人の指輪もちょーだい☆」

ドン引きする兄弟を物ともせず、二人から指輪を受け取った姫は魔神を指差して言いました。

「コイツ、よりによって婚礼当日に私をさらって閉じ込めたのよ。でもさしもの魔神も、女の情念ってやつの強さまでは知らなかったってワケ」

「魔神さんカワイソス(´・ω・`)」

自分達よりも酷い目に遭っているのがまさか魔神だったとは思わなかった二人の王様はすっかり頭が冷え、それぞれの国へと帰る事にしました。

 

シャハリヤール王は国へ帰ると、すぐ部下に妃とその奴隷達の首をはねさせました。

さらに、女性不信をこじらせすぎた王様は、大臣に毎晩自分のところへ処女を一人連れてくるように命じ、純潔を奪った上で殺すという所業をそれから三年もの間続けました。

娘を持つ国民は都からどんどん去ってしまい、ついには夜伽の相手が一人もいなくなってしまいました。

 

続く